加工の難しいアモルファス合金をスリット加工します。アモルファス合金は、脆い性質で細長く切るのが難しく、従来の加工方法では硝子のように粉々に砕けたり、切断面が結晶化したりして特質が生かせない等の難点がありました。
1987年、仲代金属は加工が困難とされていたアモルファス合金のスリット加工に成功。大企業が高い研究開発費を注ぎ込んでも成し得なかった技術を確立しました。現在においても世界唯一の技術であり、国内外からの加工の需要に応えています。
アモルファス合金は、耐久性や透磁性に優れて電気抵抗が高いといった性質から、機械の磁気ヘッドやトランスの鉄芯の材料等に適しています。そのため、アモルファス合金のスリット加工品は、モバイル機器やスマートフォン、タブレットPC、OA機器などの電子機器に欠かせません。
また、アモルファス合金は大きな省エネ効果があります。日本の発電所から電柱のトランスまですべてアモルファス合金に置き換えると、その節電効果は電力会社1社分の発電量に匹敵すると言われるほどです。
「アモルファスの切断は、最初は大手メーカーから依頼されました。他の加工業者が軒並み失敗し、当社は7番目の業者としての依頼ということでした。切る前は簡単に切れると思いましたが、それまで扱って来た金属とは勝手が違い、あえなく失敗しました。メーカーは「努力賃」として200万円を持ってきてくれましたが、失敗したのに全額を頂くのは心苦しく、120万円を返して残りの80万円で研究を続けました。
アモルファスは剃刀の300倍も硬い金属で、切断の際に機械に切断面が触れると機械の方が融けたりしました。刃も融けました。試行錯誤しても上手く行かず、思い悩むあまり一時は円形脱毛症にまでなりました。最後には、午前2時くらいに機械に灯明を灯して拝むことまでしました。
刃の材質を試行錯誤しながら1年かけて研究し、素材の持つ特有のしなりに逆らわないようにしたところ、ついに切ることが出来ました。『アモルファスの行きたいところに行かせながら切る』という考え方が大事だったのです。成功した時には、2000万円の損失を出していました。」(安中)